近自然工法とは
「河川工法から登山道工法へ」
近自然工法は、もともとは「近自然河川工法」と言い、スイスで 生まれた河川工事の技術です。
それを故福留脩文氏(西日本科学技術研究所)が日本へ伝え、各地へ広がりました。
福留氏は日本の伝統的な河川工法も研究されており、近自然河川工法と非常に類似点があることから、融合させ、様々な場所で応用されてきました。登山道整備もその応用として始まり、屋久島で最初の試験施工が 行われ、その後様々な山岳地域で研修会が行われています。
北海道大雪山では数年間にわたる研修・試験施工があり、平成17年度からは環境省直轄事業として本格的な整備が行われました。現在では「近自然登山道工法」と呼ばれ、継続して施行されています。
問題ある登山道の多くに流水による侵食現象があります。道が水路となり、土砂を流してしまいます
「生態系の復元」
近自然工法は「生態系の復元」が大きな目標です。そのためには「生態系の底辺が住める環境を復元すること」
山岳地域では「安定した土壌環境を作ること」が重要になります。
単に歩き易くすることや自然に見せることが目的ではありません。ただし、踏圧侵食を防ぐためには歩きやすさを考えなければなりませんし、自然の中には直線・平行・等間隔はほとんどなく、水の流れや自然の成り立ちを再現すると施行時にはおのずと自然の形に近づきます。
施工前
右側が流水による土壌流出(ガリー侵食)、
左側は登山者のよる踏圧による裸地化、複線化が進んでいます。
登山道でよく見られる侵食現象です。
施工直後
原因である流水を施工個所の上部で排水し、ガリー侵食部は石組みで土留兼歩行路となるように施工。
原因を捉え、土壌が安定するように施工しました。
10年経過
安定した土壌からは植物が復元し、踏圧による裸地化部にも植物が戻りつつあります。
こうなると復元した植物が施工物を守る働きが生まれ、長く保つ構造物になります。
正しい施工が出来ると自然は復元します。
自然復元は自然の成り立ちを再現することが重要だと考えます。
人間がすべきことは自然らしく見せる施工ではなく、自然が復元していく「きっかけ」を作ることだと考えます。
「自然界の構造を理解し、再現する」
自然界の構造物は非常に理にかなった構造になっています。
その構造物により周囲の生態系は生かされ、生態系が生きる
ことによって構造物が保護されるようにできています。
単に崩れないように、歩きやすいようにだけでなく、
生態系が機能するような構造物にすること。
すなわち自然界の構造を再現することが基本です。
「侵食原因と登山者心理の把握」
登山道の侵食原因は様々にあります。
利用者の踏圧、降雨などの流水、霜柱による凍結融解、極度の乾燥など、地域や場所によって原因は違っています。原因を理解し、それに対応しなければ施工物は正しく機能しません。
また、原因に対応した施工となっても、登山者が歩きにくければ、それをよけて新たな侵食が起きることもあります。
現場によりそれぞれ違う侵食原因を理解すること。
現場に合わせる設計を徹底すること。
登山者の気持ちを理解し、行動を予測した施行でなくてはなりません。
登山道侵食の進み方
凍結融解現象とは
春や秋の霜柱によって起きる侵食現象。水分を含んだ表土が持ち上がり、日中に融けるときに表土を細かく崩してしまう現象。
細かく崩れた土砂は降雨で流されてしまう。
裸地化した法面でよくみられる。
「地元の方々と共に発展させていく方法」
日本には様々な山岳地域があり、それぞれに山を愛する地元住民がいます。
その方々と共に作業することにより、地域の自然環境に合わせた整備になり地域をさらに発展させていけるように、地元の方々と協力して施工します。
本当に必要なものは、単なる技術ではなく「郷土愛」を育んでいける技術であると考えています。
「次世代へ残す整備へ」
近自然工法が正しく施工できると、周辺環境が復元してきます。施工物も周囲と調和し、とても崩れにくくなります。日本の山岳地域には、江戸時代やそれ以前に造られ未だに崩れていない石組みの登山道や歩道が少なくありません。当時の職人は自然をよく観察し、自然の理にかなった施工をしていたのだと思います。
そして地域の方々が理解し、受け継がれてきたからこそ現在に残るものになっているのだと思います。
私たちはこれを見習い、次の世代に残せるような施工を目指しています。
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